FXの魅力のひとつは、株と違って取引時間に制限がないことです。
株の場合、東京証券取引所を例にすると、前場が午前9時から午前11時30分。後場が午後12時30分から午後3時までとなっていて、この間でしか売買ができません。
ということは、昼間仕事をしている人にとっては、株のリアルタイムでのトレードはほぼ不可能だということです。
それに比べると、FXつまり通貨の取引の場合は、決まった取引所があるわけではなく、「インターバンク市場」といって銀行間で取引が行われるので、世界中のどこかの銀行が開いていればトレードが出来るということになります。
FXの人気の理由には、サラリーマンなど昼間は仕事をしている人が、帰宅後の夜の時間帯にトレードが出来る、ということが大きく貢献しているものと思います。
FXは時間帯によって値動きにクセがある
そんな「24時間いつでもトレードが可能」なFXですが、「取引する時間帯によって値動きに違いがある」ので注意が必要です。
僕もFX初心者だった頃、ロンドン勢やアメリカ勢の参入直後の「レートの急変」や、東京時間とは違う値動きに、振り回されたことが何度もあります。
なぜ同じドルと円や、ユーロとポンドといった通貨を取引していながら、時間帯によって値動きに違いが表れるのでしょうか?
それは、国のかたちや人種、民族といった個性の違いによってトレードする理由やトレードスタイルに、それぞれの特徴が反映されるからです。
例えば、輸出業で成り立っている日本では、輸出企業が稼いだ外貨を自国通貨に替える必要があることから、「外貨を売って円を買う」流れが常に起こります。
また、農耕民族の日本人と、狩猟民族の欧米人とでは、リターンを得るためのリスクの取り方などにも、民族的な違いが表れます。
このような理由から、その時間帯の取引の主体が地球の自転に沿って、日本人からイギリスを中心としたヨーロッパ人に、さらには世界最大の金融市場のニューヨークがあるアメリカへと移っていくことで、「値動きの質」も変化していくわけです。
では、一般的に東京時間・ロンドン時間・ニューヨーク時間と分けられる、それぞれの時間帯ごとのクセとはどういったものなのかを見ていくことにしましょう。
見ていくにあたっては、経済学の理論ではなく、僕自身が日々のトレードの中で「肌感覚」として感じる各市場の特性についてお話ししたいと思います。
東京時間
厳密にはニューヨーク市場が閉じたあと、東京市場が開くまでの間に「オセアニア時間」を数時間挟むのですが、この間の取引量が少ないことと、時間も短いことから通常は東京、ロンドン、ニューヨークの3つの時間帯に区分されます。
そのうちのひとつ東京時間の特徴は、3市場の中で最も「値動きがおだやか」だということです。
理由としては、アメリカやヨーロッパに比べて世界経済に影響を与えるような経済指標の発表や要人発言が、日本から発信されるケースが少ないことが挙げられます。
トレーダーの中には、小さな値動きを嫌って「東京時間はトレードしない」という人もいます。
でも、僕はけっこう東京時間でのトレードが好きで、実際、他の時間帯でのトレードよりも東京時間の方が勝率が良いんです。
なぜなら、世界経済に影響を与える経済指標や要人発言が少ないということは、「レートの急激な変動」が少ないことを意味します。
その結果、
東京時間では値動きが比較的チャートのセオリー通りに動くことが多く、チャートパターンによる確率を重視してトレードする僕のスタイルには合っているんです。
その一方で、これは日本人の性格的なものによるのか、高値あるいは安値をどんどん更新していくような「攻撃的なトレード」を好まない性質があって、為替レートがひとつの方向に突っ走るといったことがあまりありません。
その為、僕のような「逆張りのスキャルピング」が好きなトレーダーには適した市場ですが、レートがすぐに戻ってくる傾向が強いので「トレンドを追っていく」トレードスタイルのトレーダーには、東京時間は儲けにくい市場であるとも言えます。
ロンドン時間
ロンドン勢が市場に参入してくる日本時間の午後3時(冬時間の午後4時)辺りは、FXトレーダーにとっては十分に注意しなければならない時間帯です。
東京時間は、日本の経済事情や日本人の感覚によって価格形成がされますが、同じようにロンドン時間には、イギリス人を中心としたヨーロッパ人の経済事情や感覚によって価格が形成されます。
その「異質な事情」がマーケットに反映された結果、東京時間で作られた相場の流れが、ロンドン勢が参入してくる午後3時を境に一変することが多々あります。
例えば、東京時間からドル円の買いポジションを持っているトレーダーがいるとします、その人は、
「今日の相場は緩やかな上昇基調だから、安心してドル買いポジションを持っていられる」
と感じていたとします。
ところが、
そんな東京時間のマーケットの基調などはお構いなしに、ロンドン勢は彼らの都合でマーケットメイクしてきます。
それまでの緩やかな上昇基調に安心していたら、一瞬にして逆方向に、しかも大幅にレートが動かされる、といったことも日常茶飯事です。
また、いったん逆方向に動いたと見せかけて、多くのトレーダーがその方向にポジションを傾けると、今度は再度その逆方向にレートを振り回してきたりもします。
ヨーロッパ人特有のしたたかさとでも言えるのか、とにかく「人が嫌がること」を仕掛けてくるのがロンドン時間の特徴です。
ニューヨーク時間
1日のうちで最もマネーが動くのが、世界経済の王様アメリカであり、ニューヨーク時間です。
トレンドが出やすく、またボラティリティも大きくなることが多いことから、日本人にとっては深夜にもかかわらず、この時間帯を好んで売買するトレーダーがたくさんいます。
ロンドン時間の不規則な値動きに比べれば、比較的素直な値動きを見せるニューヨーク時間ですが、ここでは世界経済に影響を与える重要な指標の発表や、政治家、中央銀行総裁といった要人による発言が相次ぐことから、それによってマーケットが大きく動かされることの多い、チャンスでもありリスクでもある時間帯です。
為替レートに大きく作用する経済指標には、雇用統計、消費者物価指数、新築住宅着工件数、新規失業保険申請件数など数多くあります。
その他にも、FOMC(連邦公開市場委員会)や要人発言によって、レートが大幅に動かされ、それが新たなトレンドを生むキッカケになることもあります。
良くも悪くも世界経済を動かしているのはアメリカなので、アメリカ一国の経済指標によって世界の通貨の趨勢が決められていく、と言っても過言ではありません。
ニューヨーク時間にトレードする際に、特に注意しなければならないのは、指標が発表される時間帯です。
主には日本時間の21時30分や23時といった時間帯で、発表された指標の数値が事前の予想とかけ離れていた場合などは、暴力的とも言えるほどレートが急騰あるいは急落します。
なので、僕の場合は、仮にニューヨーク時間にトレードすることがあったとしても、経済指標の発表がある前後はポジションを持たないように気を付けています。
発表直後の値動きは、それまでのチャートの論理などを無視してひとつの方向に突っ走ることが多いので、教科書的なトレードなど通用しなくなります。
チャートの論理が通用しないということは、その分ギャンブル性が高くなるとも言えるので、個人的には(特に初心者は)、アメリカの経済指標の発表前後はあまり手を出さない方が良いと思っています。
まとめ:自分のトレードスタイルに合った時間帯を見つけましょう
以上、見てきたように東京、ロンドン、ニューヨークの各時間帯には、それぞれの特徴があります。
そのクセの違いは、トレードをしていてハッキリと「相場の空気が変わった」と感じるほど異質な値動きをします。
ということは、トレーダーのトレーディングスタイルによっては、「この時間帯には向いているけど、この時間帯には合わない」といったことが十分にあり得ます。
僕の「トレード日記」をご覧いただいている方は、僕が東京時間を好んでトレードしていることをご存知だと思います。
それには明確な理由があって、東京時間は比較的「新値を付に行かないレンジ相場」になることが多いからです。
逆張り派の僕にとっては、上値(下値)をどんどん追っていくような「トレンド相場」は、何を拠り所にしてトレードしていいのかわからなくなるので苦手なんですが、「レンジの中」で行ったり来たりを繰り返してくれる値動きならば、節となるサポートレジスタンスラインで「逆張り」を繰り返していけば、確率的にかなり有利なトレードができます。
一方、僕とは反対に「トレンドフォロー型」のトレードスタイルの人が、もし東京時間にトレードをしたら、ポジションを持つたびに「元のレートに戻ってくる」値動きに、きっとフラストレーションが溜まることでしょう。
これは、トレーダーの性格的な問題なので、どの時間帯が良いとか、どういったトレードスタイルが良いということではなく、大切なのは、自分自身のトレードスタイルを理解し、そのスタイルに合う市場でトレードすることを心がければ、確率のゲームであるFXで勝てる可能性は明確に高くなるはずです。
もしあなたが、「今の自分は相場に同調できていない」と感じることがあるのなら、普段トレードしている時間帯とは別の市場でトレードしてみるのも良いかもしれません。
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