FX初心者の中には、
「負けないトレーダー = 儲けられるトレーダー」
と思っている人が多いかもしれません。
僕も負け続けていた頃はそんな風に感じていました。
「負けないんだから、トレードすればするほど利益が積み重なっていくはず」
と。
ところが、初心者から「すこし成長」し、1日のトータルではほとんど負けなくなっていた頃の僕は、いつも月間の収支を付けるたびに、
「負けなくなったのに、意外なほど利益が出ていない」
という現実に悩まされていました。
FXで「負けるのが嫌」なら利確と損切りを早めるのが近道
1日のトータルでは負けなくなったとはいっても、1日何度もトレードするわけですから当然損切りすることもしょっちゅうあります。
「損切りをこなしつつ」も、1日のトータルでは勝っているというのは、確実に実力が付いて来ている証拠ですし、トレーダーとして健全な進化の過程にあるのは間違いありません。
ただし、「負けない」ことの中には、実はやっかいな問題点が隠れていることがあるんです。
それが、「早すぎる利確」です。
利確と損切りを早めると勝率は上がりやすくなる
おそらくですが、「勝率は悪くないのに思ったほど利益が出せない」と悩んでいるトレーダーの多くは、
「利確と損切りが素早い」あるいは、「ポジションを取ってから決済するまでが非常に速い」
そんなトレードをしているのではないでしょうか?
また、そういったトレーダーの方は、70%以上という高い勝率を誇っていたりするのではないでしょうか?
なぜそこまで具体的に言えるかというと、僕自身がそんなスタイルのトレードをしていて、且つそれぐらいの勝率だったからです。
そして、「高い勝率にもかかわらず、思ったほど利益が出せない」という予期していなかった事態に直面していました。
恐怖に負けて「さっさと逃げてた」頃の勝率は高かった
僕が今から言うことは、一見矛盾しています。
僕がFXで負けなくなり、多少なりとも利益を出せるようになったのは、
「大勝ちを狙うのをやめ、すこしの利益をコツコツと積み重ねるようになったから」
なんです。
ご存知のように、FXのチャートというのは、ポジションを取ったあとに、建値の上下を行ったり来たりすることがよくあります。
要するに、往々にして含み益と含み損を行ったり来たりしているわけです。
なので、そうやって絶えず繰り返している「小さな波」を利用して細かく利確を繰り返せば、利幅はともかく「勝率を上げる」ことは可能です。
もちろん、勝ちトレードの利益が小さいということは、損切り幅もそれ相応に小さく納める必要があります。
でも、とにかく「利確と損切りを早める」ことに留意するだけで、少なくとも「負けないトレーダー」にはなれます。
世間にスキャルピングを得意としている人が多いのはその為です。
ところが、相場の世界というのは実に矛盾に満ちた世界で、僕をFXで負けないトレーダーにしてくれた、この「素早い利確と損切り手法」では、なかなかトレードの世界で大きく稼ぐことは出来ないんです!
FXで、ようやく負けないトレーダーになり始めた僕は、しかし、
「負けない」けど「大きく勝てない」
というジレンマに襲われていました。
かと言って、トレーダーとしてまだまだ未熟だった僕は、この「素早い利確と損切り手法」を変えると途端に勝率が下がって、トレードが「とっちらかって」しまいます。
まだ、たったひとつのトレード手法しか習得できていなかったので、利益を伸ばそうとそれまでのトレーディングスタイルを変更すると、突然、元の初心者のような下手なトレードを演じてしまっていました。
トレードというゲームの不思議なところなんですが、
「負けない手法」では「大きく勝てない」
という一見矛盾した、しかし、そんなことが実際に起こってしまうんです。
勝率は高くても儲からず、結果「コツコツドカン」になりがちに
スキャルピングで勝率を高め、
「負けないトレードを演出しているトレーダー」
にとって、利益を伸ばせないことの他にもうひとつやっかいなのが、いわゆる「コツコツドカン」です。
1日のトータルで負けなくなっているトレーダーは、メンタル面でもある程度のレベルに達しているので、
「絶対にロスカットすべき場面で損切りを躊躇する」
といったことは、ほとんどなくなっていることと思います。
でなければ、1日のトータルを負けなしで終え続けることは不可能だからです。
ところが、人間のメンタルというのは、強くなったつもりでいても、意外なほどもろかったりもするわけです。
特にトレードのように、自分の資金が目まぐるしく増減を繰り返す特殊なゲームでは、それが顕著に現れます。
ありがちなケースとしては、
- コツコツ稼いできた利益を一瞬で吹き飛ばしてしまったとき
- その日の収支がプラスからマイナスに転じる場面
- 負けトレードが続いたとき
- 連勝記録が途切れてしまいそうな場面
上に挙げたような状況におかれると、トレーダーは普段出来ているはずの冷静な判断に狂いが生じ、「愚かな行為」を犯す危険性が高まります。
そして、このような、ある意味「自分の都合」をマーケットに持ち込んだトレーダーには、大体の場合「相場の神様」から罰を受けることとなります。
相場が個人の思惑など考慮してくれるはずがないことを十分の承知していながらも、「自分の都合」でトレードの判断を下してしまうことは、15年以上相場に携わってきた今でも完全に無くすことは出来ていません。
それぐらい、トレードにおけるメンタルは重要な要素です。
「自分は負けないトレーダー」だと自負したところで、しょせんトレーダーというのは大波を前にしたちっぽけな存在でしかないんです。
「コツコツドカン」のドカンを招く要因は、知識や技術の問題ではなく、「心のあり方の問題」だということと、「コツコツしか稼げていないから」だということが、お分かりいただけかと思います。
さらにもうひとつ矛盾したことを言います。
トレーダーはすべからく「大波を前にしたちっぽけな存在」であることを自覚するべきです。
逃げることに常に備えていないトレーダーは、いつか必ず大波にさらわれてしまいます。それも確実に。
その一方で、勝負に出るべき場面では、「普通の感覚の人が怖気づいて動けない中をひとり立ち向かう」大胆さが必要です。
そのさじ加減は非常に難しく、なぜなら、人間の心理というのは、不安な気持ちを放置しておくと、その気持ち(恐怖心)がどんどん大きくなってトレーダーの心を支配してしまうからです。
そんな心理状態でトレードをしていると、心の声が「もっと慎重に、もっと慎重に」とつぶやきはじめ、本来のトレードスタイルを見失ってしまいます。
その心の声を押し殺して勝負に出るときというのは、
トレードとは完全に「マインドゲーム」と呼べるもの
なので、トレードがいかに人の心に左右されるものかということを痛感させられます。
含み益のポジションほど建値に戻ってくるけど…。【人間は利益を失うことを非常に嫌がる】
トレードがマインドゲームだと認識したうえで、
「1日のトータルでは負けなくなったトレーダー」が次のレベルに進むためにやるべきこと
についてお話ししましょう。
それは、
「利益を失う恐怖」を克服すること
です。
これが、このページのタイトルである「FXで『負けないこと』と『利益を伸ばすこと』とは完全に別の技術」の答えでもあります。
「利益を失う恐怖の克服」というと、ものすごく難しいことのように聞こえますが、僕の場合でいえば、「ある種の開き直り」が大切だと思っています。
例えば、「今、数万円の含み益が出ているポジションを持っている」とします。
今利確すれば、確実に数万円を得られる状況にあります。悪くない話で、非常に抵抗しずらい誘惑です。
でも、毎回この誘惑に流されていては、トレードで大きく稼ぐことは出来ません。
このポジションの含み益をリスクにさらしてでも、「さらなる利幅」を狙わないとトレードで大きく稼ぐことは不可能なんです。
かなりの葛藤があります。
なにせ、放置したポジションほど建値まで戻ってきてしまいますから(笑)
「あのとき利確していれば」と悔やむ気持ちが芽生えるのも当然です。
でも、本能的に「目先の利益を掴みたがる」気持ちを逆に叩きのめさないと、大きな利益を得ることは出来ません。
簡単なことではないんですが、僕の場合は、
「含み益のポジションの建値にストップ(逆指値)を入れたら、このトレードにもう負けはない」
と自分に言い聞かせることでポジションを放置し、含み益を失う恐怖心を抑え込んでいます。
【実例】含み益を放置していたトレード
「論より証拠」ということで、このブログの「トレード日記」の中から、モデルケースとなるようなトレードを探してみたんですけど、ご存知のように「トレード日記」のFXトレードは基本スキャルピングなので、見本となるようなトレードがありませんでした。
そこで、FXではないんですが、「WTI原油先物が急落したのでロングでスイングしたら10万円のプラスに」という記事で書いた原油先物のトレードが、比較的「含み益放置状態」だったのでご紹介したいと思います。
上(↑)の画像が、WTI原油先物の15分足チャートです。
普段のFXのトレードと同じように「買い下がり」でポジションを作っていき、そのあと、すぐに含み益となったポジションをしばらく放置しているのが分かります。
チャートを見ると分かるように、原油先物価格が2度建値まで戻ってきてます。
上記の解説では、「含み益のポジションの建値にストップ(逆指値)を入れたら、このトレードにもう負けはない」と書きました。
FXの場合は確かにそうなんですが、これは原油先物の取引なので、「下がったら逆に買い増す」つもりだったことから、ストップロスは入れてませんでした。結果的にはそのお陰で切らされずに済んでラッキーでした。
含み益のポジションを放置しても、多くの場合元の値位置まで戻ってきてしまうのですが、「たまに」大きな利益を生んでくれます。
そして、トータルではその方が利益の増大に貢献してくれます。
ただし、これもすべて「確率のゲーム」が成り立つ上での話しなので、確率のゲームを成り立たせる為にも、当然ながら「想定の範囲内の逆指値の設定(ストップロス)」が不可欠です。
※ この原油先物トレードで僕が使った口座はXMというFX業者です。XMの体験レビューと詳しい解説をご覧ください。
大負けする人の共通点は「負けポジション放置」。ならばその逆の「勝ちポジション放置」をヤル!
往々にして、含み益ポジションを放置すると建値まで戻ってきて「ちゃんちゃん」となるわけですが、とはいっても、数を打てば中には「ブチ抜いて行く」優等生なポジションも現れます。
この「優等生なポジション」が、その他大勢の「死にポジション」の分をすべてカバーしてくれます。
それぐらい、突っ走ってくれるポジションは大きく利益を伸ばしてくれるんです。
でもこれって、実はコツコツドカンの逆パターンなんです!
「含み益ポジション放置」の手法は、実は【コツコツドカンの逆パターン】
コツコツドカンをやらかしてしまう人は、損切りをためらった為に、負けポジションを放置して、結果的に含み損がどんどん大きくなってしまいます。
だとすれば、この逆パターンを行えば、理論的には「利益のコツコツドカン」を実現できるはずです。
とはいえ、ここでもトレーダーの心理状態をかき乱す問題が現れます。
例の、「利益を失うことに対する恐怖」です。
含み益が大きくなればなるほど、「この利益を失いたくない」とか、「もうこのぐらいで十分だ」といった守りの気持ちが芽生えてきて、利益を確定したい衝動にかられます。
また、現実的な面からみても、レートが永遠にひとつの方向に走り続けることはないので、ある程度のところで利益は確定しておく必要があります。
僕の場合、そんな時は、
「論理的なレート」に指値をして待つと同時に、トレーリングストップで追いかける
このようにしておきます。
そうすれば、上手くいけば目標とした金額を得られますし、仮に、思惑通りの利益を得られなかったとしても、「ある程度の利益をすでに確保できた」という精神的な余裕も得られます。
「論理的なレート」というのは、多くの場合「前回の高値(安値)」や、日足・4時間足といった「節目になりやすい」レートのことです。
トレーリングストップに関しては、その時々のボラティリティによるので、一概にどれぐらいの間隔で追随するとは言えないのですが、僕は比較的近づけた方が落ち着くのでそうしています。
まとめ:FXで「負けない」ことと「利益を伸ばす」こととは完全に別の技術
ということで、「FXで『負けないこと』と『利益を伸ばすこと』とは完全に別の技術」のまとめとしては、
- 恐怖心に支配された「負けない手法」では大きく勝つことはできない
- 「利益を失う恐怖」を克服することなしに、大きく勝つことはできない
となります。
いずれも恐怖心の克服が必要ということで、結局のところ、いつものようにトレーダーにとって最も重要な要素は知識や技術よりも「心の問題、つまりメンタル」だということになります。
トレーダーに必要なメンタルは、人間の本能に逆らう行為なのでコントロールがものすごく難しいことではあるんですが、だからこそ「普通の人」でも専門家や大手ファンドのトレーダーに勝つことができる「可能性のある舞台」でもあります。
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